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木構造研究室

保存義務がある設計図書を確認しておきましょう

木造化の需要が増加中! 事例から見えてきた課題とは

急ぎの案件が増えています。鉄骨が値上がりし、納期も見えないため、
「木造に計画を変更したい」という相談が多く寄せられています。
なんらかの理由で、取引のある構造設計事務所に断られ、
ホームページなどで当社を見つけて問い合わせてくる方が、
昨年末から急増しました。
それらの事例から見えてきた躓きやすい問題点を解説したいと思います。

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目次
1.なぜ、急に構造計算が必要になるのか?
2.図書の省略が可能は、やらなくていいではない
3.拡大解釈が大きなロスを生む
4.構造の専門家と連携を


なぜ、急に構造計算が必要になるのか?

当社は組織系の構造設計事務所なので、ある程度、
急な案件にも対応は可能です。
ただ、特急の案件が最近増えている点が少し気になります。
というのも、非住宅木造をあまり手掛けたことがない方が、
申請時に構造計算・壁量計算が必要と気づき、
「とにかくすぐに対応を!」という案件が多いからです。

木造はご存知の通り、500㎡を超えなければ構造計算の提出は求められません。
4号特例の範囲内なら図書の省略も可能です。
ただ、不特定多数の人が利用する特殊建築物は200㎡を超えると
図書の省略ができません。計算は必要なくても構造図の提出が求められます。
300㎡を超えると設計契約も必要になります。
こう書くと、特殊建築物でなければ、構造図はいらないと思うかもしれませんが、
業務上の話と確認申請上必要な書類の話は一緒ではありません。


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図書の省略が可能は、やらなくていいではない

設計契約の書面が必要というのは建築士法上の話で、
確認申請時にチェックされる項目ではありません。
なので、特殊建築物であろうとなかろうと、
図書の省略があろうとなかろうと、
法律に従って設計図書をつくらなければなりません。

これが、いわゆる仕様規定です。
図書を省略できても、仕様規定は守らなければなりません。
「省略ができる」を、「やらなくてもいい」と
拡大解釈してしまうと間違いを犯してしまいます。
500㎡以下で特殊建築物でなくても、
法律を守ったという図書を残さなければならない図書保存の義務があるからです。
500㎡以下の建物で計算書を省略できても、壁量計算書と、
それにまつわる金物の設置については図書保存のために図書化しなければなりません。

拡大解釈が大きなロスを生む

そして、特殊建築物で300㎡を超える場合、
設計者との契約も必要になります。
そして、300㎡以下でも建築士法上は設計契約の必要はないが、
計算は各自で行って、何かあった場合は提出してください
という建付けになっています。理解し慣れてしまえば当たり前なのですが、
非常にややこしい内容です。

また、特殊建築物の場合、200㎡を超えると
構造図と壁量計算が申請で必要になります。
そのため、申請時にある程度の形になっている必要があります。
申請後、建てている途中に絵が変わってしまうと、
変更申請をかけなければなりません。図書との整合性が必要です。
200㎡を超えると、「そんなの後でいいよ」と言いながら進めることができません。
そして、300㎡を超えると、お互いどこまでやりますかという契約が必要になります。
特殊建築物でない場合は、仕様規定上で行えばよいので省略ができます。
ただ、もし何かあって、壁量の確認が必要となった場合は、
申請時には省略されているが、図書保存の義務がある書類を提出してください
ということになります。

最近多いのが、意匠設計者が300㎡を超える特殊建築物で契約が必要と気づき、
急ぎで対応してほしいという相談と、300㎡以下で省略は可能だが、
あからさまに法律を破るわけにはいかないので、
構造計算をしてほしいという相談です。
昨年の12月、構造計算が必要となる建物の範囲を、
500㎡を超えるものから大空間を有するものも含まれる300㎡を超えるものに
拡大する可能性があるというパブリックコメントが発表されました。
今後のことを考え、体系的に確認しておくことをおすすめします。

構造の専門家と連携を

この一連の流れを見ればわかる通り、
プレカット工場は仕様規定を守るというポジションにはいません。
そもそもオフィシャルに壁量計算を提出しているプレカット工場はほとんどないです。
もし、オフィシャルに壁量計算をする場合は、
設計者としての責務が発生してしまいます。
そして、その対価をもらうとなると建築事務所登録をしなければなりません。
仕様規定に準じた行動はもちろんのこと、
非住宅の場合は住宅の延長線上の壁量計算以上のものを求められることがあります。
そのため、構造の専門家とパートナーシップを組み、進めていくことがとても重要です。

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