こんにちは。中大規模木造に特化した構造設計事務所 木構造デザインの福田です。
木造施設の庇、バルコニー等の突出部に特化した、かなりニッチなセミナーを先日開催しました。
予想に反して、多くの方にご参加いただき、このようなテーマに隠れたニーズがあることがわかりました。今回、紙上セミナーという形式でその時の内容を紹介したいと思います。
木造の突出部の設計には注意が必要です。
木造は鉄骨造のように溶接による接合ができないため、頬杖や吊って壁から出すか、梁に材を乗せて持ち出すのが一般的です。
そのため、不具合を抑える要になるのが納まりです。
梁とそれを支える柱、そして、持ち出した材をどこで繋ぎ、どこで引っ掛けるのか、という複合的な納まりを検討する必要があります。
複雑に問題が絡み合うので、抜け、漏れがないように項目をリスト化し、チェックしながら意匠的な解決方法を検討してもらうようにしています。そのための表が下記になります。
大項目として、1.設計荷重条件 2.納め方 3.部位の3つがあり、それぞれに3つの小項目にわかれます
中大規模木造に取り組むべき理由とその取り組み方 この資料では、下記の内容を紹介しています。
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設計荷重条件は、①積雪荷重、②地震荷重、③風荷重の3つが代表的な項目になります。
積る、振れる、吹き上げるなど、それぞれが突出部に与える影響を検討していきます。
ただ、木構造を考える場合、荷重条件だけを単体で考えるのではなく、納め方や部位との関りも含めて検討する必要があります。
構造的な納め方には、①頬杖、②吊る、③持ち出しの3つが一般的です。
どのような納め方にするのかを他の条件と関連づけて検討していきます。
頬杖は、突出部を支えるために、柱に突っ張る力がかかってきます。
その突っ張る力による柱の曲げを考慮する必要があります。
また、突っ張る力によって、接合部が開きやすくなるので注意が必要です。
吊る場合は突出部の引っ張る力が柱にかかってきます。
その引っ張る力による曲げを考慮する必要があります。
また、一般的には、柱を欠いて座金で止めることが多いため、断面欠損になることが多いです。
それを見込んだ柱の太さが必要になります。
方杖や吊る場合は、柱への負担が大きくなるので注意が必要です。
また、それに加え、腐朽への対応、搬入車両との接触やシャッターとの干渉なども見込んで検証する必要があります。
続いて、持ち出す場合ですが、L1:L2の比率が1:2以上にするのが一般的です。
非住宅の場合、持ち出し部分が長くなるケースがあり、長材が必要になることがあります。
材の手配、搬入等も考えて検討する必要があります。
この方杖、吊る、持ち出すも、1の設計荷重条件、3の部位に関連づけて検討します。
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そして、最後が部位です。
一般的に突出部には、①屋根・軒の出、②庇、③バルコニーがあります。
雨除け用に長めの出幅を求められることがあります。
その場合、垂木で調整するか、登梁で対応するかを検討します。
そして、垂木・登梁の断面を大きくする。垂木・登梁のピッチを細かくする。
それでもダメな場合は、頬杖をするという流れで検討します。
続いて庇です。
まず検討しなければならない項目は、持ち出すか、壁から出すかです。
壁から出す場合は、頬杖や吊る検討が必要です。
元の柱との納まりや、出のサイズによって配置ピッチを考慮して、設計荷重条件も含めて検討していきます。
3つ目がバルコニーです。
バルコニーは人が乗ることを想定するので、多雪地域になると、突出部の中で最も過酷な条件になります。
雪で人が乗る、地震で人が乗る、風の中人が乗るなど、様々な条件を想定して構造を考える必要があります。
また、木造は梁に材を乗せて持ち出すのが一般的です。
そのため、二方向に持ち出しをすると梁に梁を乗せることになるため、基本的には行いません。
このように、突出部の取扱いには注意が必要です。
設計荷重条件、納め方、部位を結び付けて検討する必要があります。
今回は、検討する項目を紹介しました。
次回、具体的な案件をもとにケーススタディで解説します。後編を読む
福田 浩史
1999年三重大学大学院工学研究科・建築学専攻・修士課程修了、同年4月に熊谷組入社、構造設計部に配属。主に鉄筋コンクリート造や鉄骨造の高層マンション、店舗設計など大型建築物の構造設計を担当する。2002年6月エヌ・シー・エヌに移籍し、2020年6月取締役執行役員特建事業部長に就任。年間400棟以上の大規模木造の相談実績を持つ。2020年2月木構造デザインの代表取締役に就任。