こんにちは。中大規模木造に特化した構造設計事務所木構造デザインの福田です。
スパンの飛んだ大空間をどう成立させるのか?
ケーススタディ形式で紹介する紙面セミナーの3回目です。
20m×45mの工場を木造でどのように構造計画したら良いのかを実例を使って解説します。
大空間の木造施設の場合、いきなり構造計算に入るのではなく、「課題の洗い出し」をして、「住宅から拡張した仕様の代替案の検討」を行います。
「課題の洗い出し」、「住宅から拡張した仕様の代替案の検討」は、【前編】をご参照ください。
ケーススタディで学ぶ 大空間施設 木構造の考え方【前編】
大規模木造の構造計画のフローを知ることで、大きな失敗を回避できます。続きを読む
「構造計画の前半」は、 【中編】をご参照ください。
ケーススタディで学ぶ 大空間施設 木構造の考え方【中編】
大規模木造の構造計画のフローを知る紙上セミナーの2回目。続きを読む
構造計画をする際の主要な項目は以下になります
検討する項目が多く複雑に絡み合っているので、弊社では、下記のように検討フローをフォーマット化しています。
前回、柱と壁を検討し、
という結果になりました。そして、今回は梁と接合部の検討に入っていきます。
中大規模木造に取り組むべき理由とその取り組み方 この資料では、下記の内容を紹介しています。
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検討する内容は、
です。
一般的に流通している梁材は6mまでになります。
コストパフォーマンスを優先する場合は6m材までに抑えます。
ただ、非住宅の場合は、6m材まででまかなうことが難しく、対応できない場合は10m程度の特注材を効果的に部分使いしていきます。
スパンが飛ぶ場合は、トラス梁の利用も選択肢の1つです。
流通材を使って大スパンが実現できるトラス梁は、通直材より経済的というイメージがあります。
もちろん、経済的なトラス梁もあるので、間違いではないのですが、条件次第で一概に言えないところがあります。
トラス梁で計画する時は通直材と比較検討しながら進めていくことをお薦めしています。
ちなみに、トラス梁のメリットとデメリットを列挙すると、
トラス梁のメリット
トラス構造のデメリット
などになります。
今回の案件は、耐力壁でダブル壁を採用したため、梁の負担する荷重が軽減され、梁サイズを下げることができました。
規格のトラスやフルオーダーのトラスもコストを試算したのですが、梁サイズが下がったことで、通直材を使ったほうがメリットがあることがわかりました。
梁と接合部の次に水平構面を検討していきます。
検討項目は以下の2つです。
水平構面で重要になるのが、屋根面の構成と、垂木と登り梁の納め方です。
木造は、RC造やS造のように剛床にならないため、架構―架構(構面―構面)をつなぐ水平構面の種類は4つになります。
耐力壁がきちんと働くようにするためには、剛性の高い水平構面(床、屋根)で押さえ込む必要があります。
屋根の構面は、利用者が下から見上げるところであり、様々な部位が関係するため、意匠納まりも要求事項を考慮する必要があります。
天井面での水平構面耐力と屋根野地面での水平構面耐力は、投影した加算ができるため、意匠条件や必要耐力に応じた構成をするには、調整が必要になります。
今回のケースは、
1.水平構面の想定は、梁に合板の直貼り
2.屋根・小屋の納まりは登り梁に合板を直貼りし、垂木はその上部に載せて納める。意匠設計者と調整し、天井は貼らない
ということになりました。
構造設計フローをまとめると、
柱・壁の配置
梁と接合部
水平構面
屋根構面の構成 垂木と登り梁の納め?
という流れになります。
今後、この構造計画のフォーマットを使ったケーススタディ形式のオンラインセミナーを定期的に開催しています。
何度か繰り返すことで、木構造の考え方が理解できると思います。
ご興味のある方は、ぜひ、ご参加ください。
また、構造設計は外部との連携をお考えの方は、ぜひ、非住宅木造専門の構造設計事務所木構造デザインにご相談ください。
ご相談・仮定断面の提案は無料で行っています。
計画段階でもご不安なことがありましたら何でもご相談ください。専門スタッフが丁寧に対応いたしますので、どうぞ、お気軽にご相談ください。
福田 浩史
1999年三重大学大学院工学研究科・建築学専攻・修士課程修了、同年4月に熊谷組入社、構造設計部に配属。主に鉄筋コンクリート造や鉄骨造の高層マンション、店舗設計など大型建築物の構造設計を担当する。2002年6月エヌ・シー・エヌに移籍し、2020年6月取締役執行役員特建事業部長に就任。年間400棟以上の大規模木造の相談実績を持つ。2020年2月木構造デザインの代表取締役に就任。