こんにちは。中大規模木造に特化した構造設計事務所 木構造デザインの福田です。
「簡易木造で学ぶ初めての仕様規定」と題して、オンラインセミナーを開催しました。
2025年の4号特例縮小によって、構造計算や壁量計算に注目が集まっています。
しかし、仕様規定は木造が最低限行わなければいけない構造の安全性を確認する方法です。
4号特例縮小に伴い、ぜひ、再確認していただければと思います。
木構造における仕様規定は、建築基準法施行令第3章第3節「木造」(令40条から49条)及び、第2節「構造部材等」を示します。
第37条 構造部材の耐久性
第38条 基礎
第39条 屋根ふき材
第40条 延床10㎡以内の物置、納屋、東屋などは適用外
第41条 木材品質
第42条 土台と基礎
第43条 柱の小径
第44条 はり等の横架材
第45条 筋かいの仕様
第46条 構造耐力上必要な軸組等
1.4 耐力壁の量、配置バランス
2 耐力壁以外の耐力について
3 火打ちなどの水平構面の設置
第47条 構造耐力上主要な部分である継手または仕口
耐力壁を構成する柱梁接合仕口
水平構面を構成させる梁継手や仕口
第48条 学校の木造校舎
第49条 外壁内部等の防腐措置
構造安全性を確認する方法としての仕様規定は、大きく3つの簡易計算と8つの仕様ルールで構成されています。
3つの簡易計算
①壁量の確保(壁量計算)
②耐力壁の配置バランス(四分割法)
③柱の柱頭柱脚の接合方法(N値計算法)
8つの仕様ルール
①基礎の仕様
②屋根ふき材等の緊結
③土台と基礎の緊結
④柱の小径等
⑤横架材の欠き込み
⑥筋かいの仕様
⑦火打ち材等の設置
⑧部材の品質と耐久性の確認
4号建築物に分類される、平屋、2階建ての500㎡以下の建物は、仕様規定の技術的基準に適合していれば、構造計算を省略できます。
つまり、4号建築物は、この仕様規定に従って耐震設計されている前提の建築物です。
そして、この仕様規定を満たす設計を建築士がするということになっています。
2025年以降、この4号建築物がなくなります。
しかし、200㎡以下の平屋は新3号建築物になり、現行と同じく、審査省略制度の対象になります。
ここで、2025年の法改正以降に、注意すべき仕様規定のポイントを解説します。
2025年の改正建築基準法施行令の公布は今秋を予定しています。
現在、わかっているのは、2022年10月に公表された「必要な壁量等の基準(案)の概要」です。
「必要な壁量等の基準(案)の概要」は、
1.必要な壁量に関する規定(令第46条第4項等関連)【改正】
<方法①> 荷重の実態に応じて算定した必要壁量により確かめる方法
<方法②> 必要壁量表(ZEH水準等の数値)により確かめる方法
<方法③> 構造計算により安全性を確認する場合、壁量計算を省略可
2.柱の小径に関する規定(令第43条第1項関連)【改正】
ZEH水準等の建築物に対応する基準を追加
3.設計上の留意事項
ZEH水準等の建築物において設計上配慮が望ましいものとして、
住宅性能表示制度の評価方法基準で求める規定
「必要な壁量等の基準(案)の概要」に関しては、前回、詳しく解説したので省きますが、ここで問題になるのが、「ZEH水準等」という言葉です。
「今後、『ZEH水準等』にしなければいけないのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この「ZEH水準等」は、断熱等級6+省エネ等級5相当になります。
上記の図をご覧ください。現行法では、300㎡未満の省エネ基準適合は努力義務です。
(建築士が建築主への説明義務は生じています。)2025年以降は適合義務になります。
ここからもわかる通り、ZEH水準等がある意味スタンダードになる可能性が高いです。
4号特例縮小で構造計算や壁量計算に注目が集まっていますが、仕様規定は木造建築物が、最低限行わなければいけない構造の安全性を確認する方法です。
ベースの考え方になりますので、この機会に再度、確認していただければと思います。
また、2025年以降、ZEH水準等がどのような取扱いになっていくかも注視していただければと思います。
福田 浩史
1999年三重大学大学院工学研究科・建築学専攻・修士課程修了、同年4月に熊谷組入社、構造設計部に配属。主に鉄筋コンクリート造や鉄骨造の高層マンション、店舗設計など大型建築物の構造設計を担当する。2002年6月エヌ・シー・エヌに移籍し、2020年6月取締役執行役員特建事業部長に就任。年間400棟以上の大規模木造の相談実績を持つ。2020年2月木構造デザインの代表取締役に就任。