こんにちは。中大規模木造に特化した構造設計事務所 木構造デザインの福田です。
木造施設の庇・バルコニーなどの突出部を構造的にどう納めるか?
ケーススタディ形式で紹介する紙上セミナーの後編になります。
ニッチな内容のセミナーでしたが、多くの方から参考になったという声をいただきました。
このようなテーマに予想外のニーズがあることがわかりました。
前編に続き、構造設計のポイントを解説いたします。
まず、前回紹介したチェックリストから見ていきます。
突出部の設計には注意が必要です。
木造は鉄骨造のように溶接による接合ができないため、
頬杖や吊って壁から出すか、梁に材を乗せて持ち出すのが一般的です。
そのため、不具合を抑える要になるのが納まりです。
持ち出した材をどこで繋ぎ、どこで引っ掛けるのか、
という複合的な納まりを検討する必要があります。
問題が複雑に絡み合うため、抜け、漏れがないように項目をリスト化し、
チェックしながら解決方法を検討していきます。
そのための表が下記になります。
中大規模木造に取り組むべき理由とその取り組み方 この資料では、下記の内容を紹介しています。
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雨除け用の庇の相談を受けることがあります。
ご相談いただいた案件は、24m×14mの事務所兼倉庫です。
搬入用に4mの庇が必要でした。
まず、どのような方向性でいくのか確認します。
庇の納め方は①方杖、②吊る、③持ち出す、の3つが考えられます。
4mの持ち出しにすると、大きな梁成の梁が必要になります。
その際に考慮しなければいけないことは、
1.床梁として持ち出す場合、下階の天井高に影響が出る
2.屋根を突出部とする場合、梁成は上にあげやすい
3.屋根の延長としての突出部の場合、防水対策を講じやすい
今回の相談案件は、平屋ということもあり、庇ではなく屋根の延長として検討することになりました。
木造施設 庇・バルコニーを 構造的にどう納めるか? 【前編】
木造の突出部の設計には注意が必要です。頬杖や吊って壁から出すか、梁に材を乗せて持ち出すのが一般的です。大好評セミナーの前編とは?!続きを読む
ただ、梁で考えると材が大きくなってしまいます。
コスト的な負担が大きくなるため、通直材ではなく、トラスで計画することになりました。
鉄骨造の場合、柱に溶接することで簡単に庇を出すことができますが、
木造では難しいことが多く、屋根で対応しました。
もう一つ事例を紹介します。
「搬入用に3mの庇を出したのですが、木造で可能ですか?」というご相談でした。
プランを確認すると、前出のものと同じく、搬入用に3mの庇が必要でした。
こちらも同様に、方向性を確認しました。
納め方は①方杖、②吊る、③持ち出す、の3つが考えられます。
こちらも、3mの庇は難しいということで、登梁の屋根で対応することにしました。
搬入用の場合、柱の位置、垂木・登梁のピッチも考慮する必要があります。
また、シャッターの位置も確認し設置場所を決めていきます。
持出し屋根の荷重、シャッターの荷重、風の荷重を考えると、
柱の断面は大きくなることが多いです。
先程の表で確認すると以下になります。
荷重条件を単体で考えるのではなく、納め方や部位との関りも含めて検討する必要があります。
複雑に問題が絡み合うので、抜け、漏れがないように、下記のような項目をリスト化し、チェックしながら意匠的な解決方法を検討することをお薦めしています。
ぜひ、参考にしてください。
また、もし、計画中の案件で相談したい、または、非住宅木造の構造設計を相談する先がなく困っているという方がおられましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
福田 浩史
1999年三重大学大学院工学研究科・建築学専攻・修士課程修了、同年4月に熊谷組入社、構造設計部に配属。主に鉄筋コンクリート造や鉄骨造の高層マンション、店舗設計など大型建築物の構造設計を担当する。2002年6月エヌ・シー・エヌに移籍し、2020年6月取締役執行役員特建事業部長に就任。年間400棟以上の大規模木造の相談実績を持つ。2020年2月木構造デザインの代表取締役に就任。