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木構造研究室

木造で大型の庇を求められた時の対処法

1500mm以上の庇を木造で求められたら

こんにちは。中大規模木造に特化した構造設計事務所木構造デザインの福田です。

倉庫や工場は、搬入時の雨除け用に大きな庇を設けることがあります。その場合、1500mm以上の庇を求められることも少なくないです。鉄骨造やRC造なら問題はないが、木造でこのサイズの庇になると注意が必要です。


目次

バルコニーや庇を木造で設計する際は構造上の注意が必要

溶接で接合する鉄骨と違い梁に材を乗せて持ち出すのが一般的

木造は基本的に2方向への持ち出しができない

階段室の先の持ち出しバルコニーも問題になる

まとめ

バルコニーや庇を木造で設計する際は構造上の注意が必要

バルコニーや庇などの出っ張りを木造で設計する際は構造上の注意が必要です。庇の場合、積雪等の条件にもよりますが垂木を120mm成くらいにすれば900mm程度までは可能です。

しかし、それを超えると、垂木材の調整や、頬杖、吊る、柱を立てるなどの対策が必要になります。ただ、頬杖を使用したり吊ったりすると柱への負担が増すことと、腐朽への対策が必要になります。車の行き来が前提の雨除け用庇なので、簡単に頬杖や柱を立てる訳にもいきません。

木造では、片持ちの庇は構造的に難易度が高く、屋根を伸ばして庇代わりにすることが多いです。


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溶接で接合する鉄骨と違い梁に材を乗せて持ち出すのが一般的

ただ、2階建てや階高が高くなると他の対応策が必要になります。木造は鉄骨造のように溶接による接合ができないため、梁に材を乗せて持ち出すのが一般的です。その場合、納まりに注意が必要です。

梁とそれを支える柱、そして、持ち出した材をどこでつなぎ、どこに引っ掛けるか、という複合的な納まりを計画しなければなりません。ただ、納まりが意匠に関わってくることも多く、構造設計者が単独で決められないことが多いです。

構造設計者が納まりを検討しても、最終的に意匠上どうとらえるかに戻ってしまいます。そのため、構造設計者とおおまかな納まりを共有しながら設計を進めるとスムーズにいきます。

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木造は基本的に2方向への持ち出しができない

具体例で見ていきましょう。先日、一方がバルコニー、そして、もう一方が1mほどの避難通路で計画された介護施設の相談を受けました。

木造に慣れていない方だったので、あまり意識をせずに計画を進めていました。木造は基本的に2方向への持ち出しができません。一方を梁に乗せて持ち出し、もう一方をその梁にクロスさせて持ち出さなければならないため、納まり上は通常の倍の梁の高さが必要になります。

階段室の先の持ち出しバルコニーも問題になる

同様に、階段室の先に持ち出しのバルコニーがある場合も問題になります。当然であるが持ち出している部分の梁を階段室内の床面に引き込む納めとはならないからです。どこにつなぎ、どこに引っ掛けるかを検討しなければならないからです。

ここが木構造の納まりの難しさであり、慣れていないとプレカット加工時に問題になってしまいます。

まとめ

木造は複雑な構造になるほど、コストもかかる傾向にあります。木構造のルールに則ってシンプルな構造にすることでコストマネージメントがしやすくなります。構造設計者と密に連携をとり、シンプルな納まりの設計にすることがとても重要です。

もし、バルコニーや庇でお困りになり、このコラムを読まれていましたら、どうぞお気軽に、ご相談ください。

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福田 浩史

  • 構造設計一級建築士/コンクリート技士
  • 株式会社木構造デザイン代表取締役社長

1999年三重大学大学院工学研究科・建築学専攻・修士課程修了、同年4月に熊谷組入社、構造設計部に配属。主に鉄筋コンクリート造や鉄骨造の高層マンション、店舗設計など大型建築物の構造設計を担当する。2002年6月エヌ・シー・エヌに移籍し、2020年6月取締役執行役員特建事業部長に就任。年間400棟以上の大規模木造の相談実績を持つ。2020年2月木構造デザインの代表取締役に就任。