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木構造研究室

特別養護老人ホームを木造で計画する時の関連法規

RC造で建てることが多かった高齢者施設の木造化が進んでいます

これまで、RC造で建てることが多かった高齢者施設が、
2010年の「公共建築物等における木材の利用促進法」の施行と
規制緩和により木造化されることが増えています。

高齢者施設は社会福祉施設にあたるため利用促進法の対象になります。
そして、建築基準法の改正による規制緩和で、
耐火構造にしなければいけなかった建物が、
性能を満たせば準耐火構造で認められるようになりました。
それらによって、木造化に拍車がかかっています。

高齢者施設を木造化するメリット

高齢者施設は、木の温かみや快適性とも相性が良く、
施設側にもメリットがあります。

例えば、ビジネスとして考えた場合、
減価償却期間が短く、事業期間が終了する際に未償却分の費用が残りにくく、
床の硬さによる骨折に及ぼす影響等を考えると、コンクリートスラブ直貼りの施設に比べ、
木造の施設のほうが転倒しても骨折しにくいという調査結果もあります。

また、他の工法に比べ、建築コストを抑えることができ、
軽量なため、地盤改良や杭工事の費用も抑えることができます。

そして、鉄骨造やRC造に比べ、工期を大幅に短縮できます。

社会福祉法人等が高齢者施設を建設する際は、
国や県、市から交付される補助金により
建設事業費を捻出するケースが多くあります。

補助金事業は、「工期」を遵守する必要があり、
多くの場合、年度始めの4から6月に内示、
年度末の翌年3月に事業完了という条件になります。

こう言った点も木造が適している理由になります。

建築基準法27条による特殊建築物

高齢者施設の多くは、建築基準法27条による特殊建築物になります。

また、建築基準法以外に定められた各施設の設置基準によって
規定されている項目を守らなければなりません。

高齢者施設は、運営主体、目的や入居条件によりさまざまな種類があります。
その各施設に設置基準等の規定が異なるので注意が必要です。

今回は、要介護の方を対象とした高齢者施設「特別養護老人ホーム」を、
木造で計画する際の関連法規の規定について解説していきます。

木造の特別養護老人ホームにおける耐火要件

特別養護老人ホームは、建築基準法27条による特殊建築物です。

建築基準法施行令19条により児童福祉施設等に含まれます。
建築基準法では、階数や床面積の規模に応じた耐火性能が求められています。

特別養護老人ホームを計画する際に注意すべきことは、
「特別養護老人ホームの設備および運営に関する設置基準」に規定があることです。

その規定では、2階建て以上の場合は「耐火建築物」、
平屋建ての場合は「準耐火建築物」が基本となります。

ただ、安全性の確保の措置をした上で、都道府県知事等が認めた平屋建ての場合は、
耐火建築物・準耐火建築物以外の建築物として木造で計画することができます。

木造の特別養護老人ホームにおける内装制限、防火区画、立地制限

木造の特別養護老人ホームにおける内装制限に関しては、
建築基準法の内装制限を確認する以外に、
「特別養護老人ホームの設備および運営に関する設置基準」においても
内装制限に関わる規定があるので注意が必要です。

居室等および地上に通ずる廊下、その他の通路の壁および天井の室内に面する部分の
仕上げを不燃材料ですることにより、居室、静養室、食堂、浴室および機能訓練室を
3階に設けることが可能です。

ただし、その際は、避難計画、防火区画設置も必要となります。

木造の特別養護老人ホームにおける防火区画に関しては、
「特別養護老人ホームの設備および運営に関する設置基準」で、
医務室の設置を義務づけており、これを医療法上の診療所とすることになります。

異種用途区画の規定により、この診療所とその他の部分とを
防火区画する必要があるかについては、確認申請時に特定行政庁と
相談する必要があります。

木造平屋建てとする場合でも、調理室等に防火区画を設置する必要があります。
3階以上の階に居室、静養室等を設ける場合は、防火区画の設置が要件となり、
その際、避難計画、内装制限も必要となります。

詳細は「特別養護老人ホームの設備および運営に関する設置基準」で確認が必要です。

木造の特別養護老人ホームにおける立地条件に関しては、
都市計画用途地域のうち工業専用地域に建てることができませんので注意が必要です。

木造の特別養護老人ホームで建築基準法以外に注意すべき規定

木造で特別養護老人ホームを計画する際は、
建築基準法以外で注意すべき規定があります。

特にポイントとなるのは、
「特別養護老人ホームの設備および運営に関する設置基準」です。

1.老人福祉法(厚生労働省管轄)

「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」
老人福祉法には、特別養護老人ホームは「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」を
守らなければなりません。主な規定は下記です。
(他にも細かい規定がありますので、計画時に必ず確認することをお勧めします。)

■施設の設置

居室、静養室、食堂、浴室および機能訓練室(以下「居室、静養室等」という。)は、
階以上の階に設けてはならない。ただし、次の各号のいずれにも該当する建物に
設けられる居室、静養室等については、この限りでない。

一 . 居室、静養室等のある3階以上の各階に通ずる特別避難階段を二以上
(防災上有効な傾斜路を有する場合または車いす若しくはストレッチャーで
通行するために必要な幅を有するバルコニーおよび屋外に設ける避難階段を
有する場合は、一以上)有すること。

二. 3階以上の階にある居室、静養室等およびこれから地上に通ずる廊下
その他の通路の壁および天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でしていること。

三 . 居室、静養室等のある3階以上の各階が耐火構造の壁
または建築基準法施行令112条1項に規定する特定防火設備
(以下「特定防火設備」という。)により防災上有効に区画されていること。

■設備の基準

<居室>

  • 一の居室の定員は、 4人以下とすること。地階に設けてはならないこと。
  • 入所者一人当たりの床面積は、10.65m2以上とすること。
  • 一以上の出入口は、避難上有効な空地、廊下または広間に直接面して設けること。
  • 床面積の1/ 14以上に相当する面積を直接外気に面して開放できるようにすること。

<食堂および機能訓練室>

  • 合計した面積が3m2 ×入所定員以上とすること。
  • ただし、食事の提供または機能訓練を行う場合において、
    当該食事の提供または機能訓練に支障がない広さを確保することができるときは、
    同一の場所とすることができる。

<廊下・階段・斜路の基準>

  • 廊下の幅は、1.8m以上とすること。ただし、中廊下の幅は、2.7m以上とすること。
  • 居室、静養室等が2階以上の階にある場合は、一以上の傾斜路を設けること。
    ただし、エレベーターを設ける場合は、この限りでない。

2.消防法(消防庁管轄)

特定防火対象物(消令別表第1(六)ロ)

消火栓設備やスプリンクラー設備の設置が求められる規模についても
考慮し計画する必要があります。

3.医療法(厚生労働省管轄)

施設内の医務室については、法律に規定する診療所とすることが定められています。

特別養護老人ホームの2階建が準耐火建築物で可能となる条件

国は高齢者施設に関する規制改革を進めており、
厚生労働省から「構造改革特別区域における特別養護老人ホーム等の2階建て
準耐火建築物設置事業の全国展開について」という通達が発表されています。

全国の特別養護老人ホーム等において条件付きで
準耐火建築物で建設することが可能になっています。

その内容は下記です。

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設,指定短期入所生活介護事業所
および指定介護予防短期入所生活介護事業所(「特別養護老人ホーム等」といいます。)
については、原則として耐火建築物であるが、2階および地階に居室(療養室)
その他利用者の日常生活に充てられる場所(「居室等」という。)を設けていない
準耐火建築物であることが求められます。

<準耐火建築物の2階または地階に居室等を設ける場合の3要件>

  1. 所在地を管轄する消防長又は消防署長と相談の上,非常災害に関する具体的計画に
    入所者の円滑かつ迅速な避難を確保するために必要な事項を定めること。
  2. 避難,救出等の訓練については,計画に従い昼間および夜間において行うこと。
  3. 火災時における避難,消火等の協力を得ることができるよう、
    地域住民等との連携体制を整備すること。
     ※具体的な確認方法については地方自治体等が発表している要綱をご確認ください。

この要件の特例として、2階または地階に居室等を設ける場合等であっても、
一定の要件を満たした場合,準耐火建築物とすることが認められています。

まとめ

木造の高齢者施設を計画する際のキーワードは「準耐火建築物」です。

木造の場合、耐火建築物と準耐火建築物では、建設コスト・工期・デザイン等に大きな差が生じるからです。
準耐火建築物となることで、木造の優位性を発揮できるとも言えます。

木材は柔らかで温かみのある感触が得られ、室内の湿度変化を緩和させ快適性を高めるということで、
国は木材を活用した高齢者施設づくりを推進しています。

これまでの法改正直後の状況をふりかえっても、改正建築基準法の解釈や運用方法については、
行政窓口が混乱していたり関連する条例等も整備されていない場合も多いので、
本コラムの内容も「改正内容の要点解説」となることのご理解、ご了承をお願いします。

建築実務者の皆様においては、安易に自己判断せず、該当の行政窓口や指定検査確認機関等に
よく内容を確認してから設計や施工を進める必要がありますのでご注意ください。