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木構造研究室

改正建築基準法「確認申請・審査マニュアル」確認しましたか?

こんにちは。中大規模木造に特化した構造設計事務所 木構造デザインの福田です。


2025年の改正建築基準法・改正建築物省エネ法の円滑な施行に向けて、国土交通省主催の講習会が、11月1日から始まりました。

未だ確定していない部分もありますが、対応できるところから随時準備を進めていきましょう。

講習会の資料や「確認申請・審査マニュアル」なども、国土交通省の「改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する解説資料とQ&A」というページ(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_document.html)からダウンロードできるようになっていますので、ぜひ、ご確認ください。


目次
4月後の着工
簡易な構造計算と高度な構造計算
構造図と構造計算書


4月後の着工

注意が必要なのが、2025年4月(予定)後の着工物件から改正法が適用されるというところです。

着工を起点に逆算すると意外と時間がありません。

法改正後は、旧4号建築物のうち階数2以上又は延べ面積200㎡超の平屋に構造審査等、300㎡超からは構造計算が必要になります。

しっかりと、フローの中で申請手続きを踏めるように準備していきましょう。

簡易な構造計算と高度な構造計算

木造建築物について、仕様規定や簡易な構造計算で建築できる範囲は、従来は高さ13m以下、かつ軒高9m以下の建築物でしたが、改正法施行後は、軒高に関わらず16m以下に拡大されます。

逆に、従来は2階建て以下で延べ面積500㎡以下の建築物であれば、仕様規定により構造安全性を確認できましたが、改正法施行後は、延べ面積が300㎡超の場合は、少なくとも簡易な構造計算をしなければいけません。

出典:国土交通省「改正建築基準法2階建ての木造一戸建て住宅(軸組構法)等の確認申請・審査マニュアル」


ここで、気になる言葉が、「簡易な構造計算」と「高度な構造計算」です。

構造計算には、「簡易な構造計算」と「高度な構造計算」の2つがあります。簡単に説明すると、令第81条で、以下のルートにわかれています。

ルート1 許容応力度設計

建築物自体の重さや建物内の人や物の重さに耐えられるか、地震・台風による力に耐えられるのかを計算します。

(令第82条各号及び第82条の4に定めるところによる構造計算)


ルート2 許容応力度等計算

ルート1の計算を満足しつつ、建築構造物のバランスや接合部の破断防止、部材の局部座屈防止などを計算。


ルート3 保有水平耐力計算

建築構造物が地震で崩壊せず粘り強く耐えられるかを計算。


限界耐力計算・時刻暦応答解析

外部から加わる力に、どこまで耐えるか限界をチェックするための計算。


このルート1に当たるものが、「簡易な構造計算」になります。

上記の表で確認いただくと、木造の3階建て、300㎡超、高さ16m以下については、簡易な構造計算が求められます。

そして、それを超えるものについては高度な構造計算が必要になります。


また、現行法では、軒高9m超、最高高さが13m超の建築物については、一級建築士が設計しなければいけませんが、改正後は、軒高16mまで二級建築士でも設計ができるようになります。


名称が「簡易な構造計算」なので、比較的簡単にできると受け取られそうですが、非住宅の場合はそう簡単ではありません。


300㎡超というと、50坪程度の総2階の共同住宅や事務所にも構造計算が必要になってきます。

今までは、4号特例で進めることができましたが、構造計算の手続きをとらなければなりません。

構造に求められる要求が増えるために、対応策を考えておく必要があります。

構造図と構造計算書

4号特例(6条1項4号)は、一定の規模の建物までは、確認申請時に、①構造図と②構造計算書を省略することができました。


構造図

①の構造図に関しては、前号で紹介したように、改正後、新3号建築物では省略できますが、新2号建築物では審査の対象となります。

詳しくはこちら(法改正後の木造建築に備える「設計図書に書き込むべきこと


尚、建築確認検査においても審査検査の対象になります。

構造審査だけではなく、現場の検査についても対象になるということも注意が必要です。


4号特例縮小という言葉から、構造図と構造計算書の両方を添付する必要があると思われていましたが、説明会の資料を見ると、仕様表等に記載することで、基礎伏図、床伏図、小屋伏図、軸組図の添付が省略できそうです。

ただ、「確認申請・審査マニュアル」にも注意書きがあるように、2020年に改正された建築士法の15年間の保存義務を順守するよう求められています。

出典:国土交通省「改正建築基準法2階建ての木造一戸建て住宅(軸組構法)等の確認申請・審査マニュアル」


建築基準法では、仕様表を提出すれば、確認申請時に伏図等を省略しても良いが、建築士法では、伏図や基礎図は保存しなければいけないという、この2つの法律をしっかり押さえておいてください。


構造計算書

そして、②の構造計算書も、2020年に改正された建築士法の15年間の保存義務の中に、明記されています。

構造計算書等は、大きく3つにわけられます。

出典:国土交通省「建築士事務所の図書保存の制度の見直しについて」


⑴ 保有水平耐力計算、限界耐力計算、許容応力度等計算などの構造計算書

こちらは、いわゆる木造3階の計算書になります。


⑵ 仕様規定の適用除外のただし書で必要な構造計算、燃えしろ設計に係る構造計算等の構造の安全性を確認するために行った構造計算の計算書

こちらは、仕様規定 適用除外のただし書きで必要な構造計算になります。


⑶ 壁量計算、四分割法の計算、N値計算に係る図書

こちらは、仕様規定に含まれた構造検討書(壁量計算書 四分割 接合金物)になります。


上記は、構造性能規定に属する、いわゆる構造計算書と、仕様規定に属する壁量検討書や金物選定の2つに大きく分けることができます。


今回の国土交通省が公開した「確認申請・審査マニュアル」は、仕様規定に属する壁量検討書や金物選定の書面が詳しく書かれています。

また、仕様表等に記載することによって、伏図関係を省略できることも比較的細かく書かれていますので、ぜひ、ご確認ください。

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福田 浩史

  • 構造設計一級建築士/コンクリート技士
  • 株式会社木構造デザイン代表取締役社長

1999年三重大学大学院工学研究科・建築学専攻・修士課程修了、同年4月に熊谷組入社、構造設計部に配属。主に鉄筋コンクリート造や鉄骨造の高層マンション、店舗設計など大型建築物の構造設計を担当する。2002年6月エヌ・シー・エヌに移籍し、2020年6月取締役執行役員特建事業部長に就任。年間400棟以上の大規模木造の相談実績を持つ。2020年2月木構造デザインの代表取締役に就任。