こんにちは。中大規模木造に特化した構造設計事務所木構造デザインの福田です。
リフォームの相談が増えています。
ただ、木構造デザインではリフォームの相談には応じていますが、構造計算はお断りをしています。
なぜかというと、非住宅木造のリフォームはいろいろな問題が絡んでくるため、簡単にお受けすることができないからです。
特に、増床を伴う増築には注意が必要です。
具体的な事例を交えて解説します。
「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行から10年が経ち、当初建った施設の
改修や修繕が増える時期に差し掛かっています。
今後、中大規模木造のリフォーム市場は大きなマーケットになることでしょう。
ただ、中大規模木造のリフォームを受注するには、ある前提条件をクリアしなければなりません。
先日も、築10年の500㎡ほどの福祉施設でバルコニーを部屋に改築した場合、構造計算は必要か?という相談を受けました。
その建設会社は施設を建てた訳ではなく、その施設で働く職員さんの家を新築したつながりで見積りの依頼を受け、対応に苦慮していました。
中大規模木造に取り組むべき理由とその取り組み方 この資料では、下記の内容を紹介しています。
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柱が立って屋根がかかれば建築基準法上、部屋になります。
床面積が増えるのであれば、増築申請をしなければいけません。
今回、増床する面積は数十㎡と小さく、意匠申請に大きな問題はありませんが、構造的に設計当初の条件で見合っているか確認する必要がありました。
もし、見合っていない場合は全体、もしくは部分的に、再度、構造検討する必要があります。
建設時の構造設計士に依頼すれば当時のデータを基に計算できます。
しかし、別の構造設計士に当時の設計図書なしで依頼するとなると、構造計算を初めからやり直さなければなりません。
それだけでも相当な費用負担になります。
もちろん、構造だけで申請することができないので意匠申請も必要です。
たった数十㎡の増床に対して相当な金額がかかります。
そのため、建設時の意匠設計士、構造設計士にお願いすることができればスムーズに進められるのですが、当初の作品に手を加えることになるため、改修、修繕をやりたがらない設計士もいます。
さらに10年前の建物を改修するとなると、現行の建築基準法に照らし合わせて既存不適格になる可能性もあります。
換気や温熱などスペックが足りないと判断されてしまうと、全体に影響が出る場合もあります。
これらは申請時の審査次第というところがあるので、申請してみないと適切な対応がとれません。
例えば、今回のバルコニーの場合、全体の中の一部分の改修ということで問題がないと解釈される場合もあれば、そうでないと判断される場合もあります。
このような審査機関への対応も含めて意匠設計士にお願いすることになります。
今回のケースも10年目のメンテナンス点検の際にリフォームの話になったのですが、ゼネコンサイドではコンプライアンス上対応できず、意匠設計士に相談すると、良い返事をもらえませんでした。
事業主としたら、自分の持ち物なので何とかしたいと思い、たまたま職員の家を建てた工務店に声をかけたという経緯だったようです。
このような相談はこれからも増えることでしょう。
弊社としてもお手伝いをしたいのですが、上記のような理由で対応が難しいのが実情です。
しかし逆に考えると、中大規模木造の施設を受注することができれば、定期的に「メンテナンス工事」を受注できる可能性が高いです。
意匠設計士、構造設計士と連携して対応をしなければいけないということはありますが、競合になることはまずありません。
また、住宅と異なり事業用の施設は一定の期間で改装や修繕を繰り返します。
数が重なれば安定的な収益源になります。
「脱炭素社会の実現に資するための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が10月に施工され、今後中大規模木造のマーケットは広がっていくことでしょう。
それに合わせてリフォーム市場も膨らんでいきます。
今まで培ってきた木造建築の強みを生かして、新しい事業として育ててみてはいかがでしょうか。
福田 浩史
1999年三重大学大学院工学研究科・建築学専攻・修士課程修了、同年4月に熊谷組入社、構造設計部に配属。主に鉄筋コンクリート造や鉄骨造の高層マンション、店舗設計など大型建築物の構造設計を担当する。2002年6月エヌ・シー・エヌに移籍し、2020年6月取締役執行役員特建事業部長に就任。年間400棟以上の大規模木造の相談実績を持つ。2020年2月木構造デザインの代表取締役に就任。