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木構造研究室

法改正後の木造建築に備える「設計図書に書き込むべきこと」


 こんにちは。中大規模木造に特化した構造設計事務所 木構造デザインの福田です。

 2025年の法改正により、審査省略制度、いわゆる「4号特例」の対象範囲が、

  • 3号建築物 図書省略(平屋200㎡以下の木造建築物)
  • 2号建築物 仕様規定(平屋200㎡超、300㎡以下・2階建て300㎡以下の木造建築物)
  • 2号建築物 構造計算(平屋・2階建て300㎡超・3階建ての木造建築物)

に区分けされます。

 今回は、「2号建築物 仕様規定」をテーマに解説します。

 法改正後、設計図書の提出が必要になる注目度の高い区分になりますが、改正建築基準法施行令の公布がこれからなので、現状わかる範囲で解説いたします。

<関連コラム>簡易木造で学ぶ初めての仕様規定(3号建築物 図書省略)


目次
適切に図面が作成されているか?
意思伝達の道具としての図面
チェック機能も省略!?
15年間の図書保存義務
まとめ


適切に図面が作成されているか?

2025年の法改正を前に、

  • 設計手法がどのように変わるのか?
  • 外注先とどのように連携していくのか?
  • 社内のルールや基準をどのように修正するのか?
  • お施主様への説明や合意をどのように進めていくのか?

等の懸念事項があります。

 ただ、押さえておかなければならないポイントは、“適切に図面が作成されているか?”ということです。

 なぜなら、図面は、「意思伝達をするための道具」であり、前後の工程を考慮して作成されていれば、法改正を、それほど危惧する必要がないからです。

 ただ、ここで問題になるのが、図面の目的、役割と対象となる人物が、工程毎に異なるということです。見せ方や読まれ方が交錯すると、意思伝達が図りにくくなります。整理する意味で図にすると下記のようになります。

意思伝達の道具としての図面


 普段の業務の中で、何気なく見ている図面ですが、言語化すると、

  • 意匠設計者の初期計画図は、プレゼン、予算用の図面です。平面図・立面図・仕様書などで、これから作る建物のイメージを伝えるために使われます。
  • 確認申請用の設計図書は計画が法適合しているかを確認するために用いられます。
  • 施工図は、施工会社との間で工事や積算に用いられます。

 それぞれの工程毎に、図面の目的、役割と対象となる人物が異なります。

 今回の法改正では、確認申請用の設計図書に注目が集まっていますが、もう一度、図面は意思伝達の道具であり、前後の工程と深く関わっているということに立ち返って考えてみたいと思います。

 下記の図を見ていただければわかる通り、建築確認申請では、計画が法適合しているかを、設計図書を通して審査し、問題がなければ、確認済証を発行するという工程になっています。

 別の言い方をすると、建築士の責任で法適合している図面をお施主様に提案し(前工程)、確認申請時に設計図書を通して法適合しているかをチェックし、その図書通りの建物が建つ(後工程)、という大きな流れです。

チェック機能も省略!?


 しかし、現状は4号特例で、この設計図書の提出が省略されています。

 建築士の責任で法適合している図面をお施主様に提案し、その建物が建つ、という簡略化された流れになり、チェック機能が不明瞭になっています。

 このフローでは、確認申請時の設計図書を通しての法適合、その図書通りの建物が建っているかということが曖昧になってしまいます。

 このチェック機能、責任の所在を明確にするための法改正が行われてきました。

 代表的なものが、2020年の建築士事務所の図書保存制度の見直し(建築士法施行規則第21条)です。これにより、建築士事務所の開設者は15年間図書を保存することが義務づけられました。

15年間の図書保存義務


先程の

  • 建築士の責任で法適合している図面をお施主様に提案し
  • 確認申請時に設計図書を通して法適合しているかをチェックし
  • その図書通りの建物を建てる

の流れの中で、設計図書は重要な役割を持っているので、ちゃんと保存してください。前後の工程に意思伝達がしっかりできている証拠として残してくださいということです。 

当たり前と言えば、当たり前のことなのですが、この見直しによって義務づけられました。

見直しの内容を一部抜粋すると、



「建築士事務所の開設者には一定の図書の保存が義務付けられていましたが、木造建築物の構造安全性を確かめるための重要な計算である、壁量計算、四分割法の計算及び、N値計算に係る図書や、構造の安全性を確かめることで、一部の仕様規定を適用しないこととするための構造計算等に係る図書については保存が義務付けられていませんでした。

このような状況を踏まえ、設計等業務の委託者の保護を図る観点から、建築士事務所の図書保存の制度が見直されました。

改定の概要は、全ての建築物について、配置図、各階平面図、二面以上の立面図、二面以上の断面図、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図、構造計算書、工事監理報告書の保存を義務付けることとしました。」



 と書かれています。 

 ここでポイントになることが2つあります。

 1つが、木造建築物で工事監理報告と構造図を明記した点。

 そして、もう1つが、仕様規定の内容に沿った各種計算や検討図書を明記した点です。

 ※国土交通省のホームページから、サンプル図面がダウンロードできるようになっています。

 図面に何を書き込むべきなのか、ぜひ、一度チェックしていただければと思います。

まとめ


 2号建築物 仕様規定(平屋200㎡超、300㎡以下・2階建て300㎡以下の木造建築物)は、今後、設計図書の提出が必要になる注目度の高い区分です。

 ただ、図面は「意思伝達をするための道具」という考えをベースに、前後の工程を考慮した図面を作成していれば、法改正を危惧する必要はありません。

 改正建築基準法施行令の公布がこれからなので、現状わかる範囲での解説になります。まだ、不明確なところも多いため、新たに情報がわかりましたら、随時、解説していきます。

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福田 浩史

  • 構造設計一級建築士/コンクリート技士
  • 株式会社木構造デザイン代表取締役社長

1999年三重大学大学院工学研究科・建築学専攻・修士課程修了、同年4月に熊谷組入社、構造設計部に配属。主に鉄筋コンクリート造や鉄骨造の高層マンション、店舗設計など大型建築物の構造設計を担当する。2002年6月エヌ・シー・エヌに移籍し、2020年6月取締役執行役員特建事業部長に就任。年間400棟以上の大規模木造の相談実績を持つ。2020年2月木構造デザインの代表取締役に就任。