「倉庫は鉄骨が当たり前」
「店舗、事務所も鉄骨でしょ」
そんな常識は過去のものになりつつあります。
近年、倉庫・店舗・事務所の木造化が急速に進んでいます。
有名なのが、マクドナルドの店舗の木造化です。
林野庁が推進する「ウッド・チェンジ・ネットワーク」に賛同し、
積極的に国産材を活用して、新規出店、改装、建て替えを進めています。
企業が積極的に、木造の倉庫・店舗・事務所を選ぶ時代になっています。
ただ、倉庫・店舗・事務所などの中大規模の建物は、
一般の住宅と異なり木造にする際に注意しなければいけないポイントが
いくつかあります。
今回は、大規模木造の倉庫・店舗・事務所の
坪単価&計画する時の3つのポイントを紹介します。
倉庫・店舗・事務所は、低層でシンブルな形状の建物が多く、
木造に向いています。
木造にすることで、工期の短縮、ローコスト化もしやすいです。
しかし、燃えやすい、耐久性に劣る、
というイメージが木造は強いため鉄骨造が主流です。
国土交通省の建築着工統計調査のシェアで見ると、
倉庫は、76%が鉄骨造、2位の木造のシェアは18%しかありません。
では、耐火要件を詳しく見ていきましょう。
事務所を木造で建てるとなった場合、
■事務所は、法27条の特殊建築物に該当しません。
そのため、高さ13m、軒の高さ9m以下、および延床面積3000㎡以下は、
耐火・準耐火建築物以外の建物として建設できます。
■店舗は、法27条による特殊建築物に該当します。
3階建て以上は耐火建築物、2階建てで床面積が500㎡以上の場合は
準耐火建築物にする必要があります。
■倉庫は、法27条による特殊建築物になります。
床面積が1500㎡を超える場合は、準耐火建築物にする必要があります。
それぞれの用途によって、規定が変わってきますので、
しっかり押さえておきましょう。
そして、もう一つの重要なポイントはスパン計画です。
倉庫や店舗は、大空間を実現するためにスパンが求められます。
今、トラスを利用すれば木造でも、
ある程度のスパンを実現することが可能です。
ただ、一般的に、スパンが広がれば広がるほどコストが上がります。
梁成も高くなるので、高さに気を付けて設計をしなければなりません。
コストとのバランスを取りながら、柱や壁を入れることも考慮する必要があります。
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店舗や倉庫で柱や壁が入るとマイナスに捉えがちですが、
木造の特性を説明することで企業側との折衷案を見つける必要があります。
多くの企業は、環境への配慮や企業イメージ向上等で
木造を望んでいます。
住宅の提案の場合、ヒアリングをして動線等を丁寧に設計に落とし込んでいきます。
倉庫や店舗、事務所の場合も、どのように利用するかを詳しくヒアリングして、
使いやすさを織り込みながら、壁や柱を入れる提案力が必要です。
今、従業員満足度向上を求める企業が増えているため、
木造の良さである木の温かみを現しで表現することで、
オフィスの心地よさ、快適さに繋げることもできます。
柱や壁をマイナスと取らずに、プラスにする提案力がポイントになります。
木造は鉄骨造、RC造と比べて、多くのメリットがあります。
事業主様にしっかりとメリットを伝える必要があります。
国土交通省の建築着工統計調査を見ると、
事務所は、木造が坪57万円に対し、鉄骨造は106万円、RC造は125万円。
店舗は、木造が59万円に対し、鉄骨造は62万円、RC造は98万円。
倉庫は、木造が36万円に対し、鉄骨造は43万円、RC造は45万円です。
データからも価格的なメリットがうかがえます。
ただ、1つ注意しなければいけないことがあります。
それは、木造だったら何でも安くなるかというと、
そうではないと言うことです。
弊社は、構造設計事務所なので、いろいろな案件が持ち込まれます。
中には、鉄骨造やRC造で計画していた案件を
そのまま木造に置き換えてほしいというものもあります。
そのような案件の構造計画を行うと、
鉄骨造やRC造よりも高くなってしまうことがあります。
特殊材や特殊加工が多く、
想像以上にコストが積み上がってしまうためです。
ですから、倉庫や店舗、事務所を計画する時は、
木造のスパンや荷重、コストの考え方を計画に盛り込むことがとても重要です。
例えば、住宅用として流通している一般材を中心に
スパンやモジュールを計画するなどしてコストを抑えることができます。
木造化によるコストパフォーマンスは、データを見れば一目瞭然です。
構造設計者と連携し、設計を工夫することが重要です。
木造のメリットとして他の工法と比べ
減価償却期間が短いとことがあります。
原価償却年数が短いと、納税の面で有利になることがあります。
短い分、毎年の減価償却費を多く計上ができるため、
税負担が有利になることがあります。
倉庫や事務所の場合は、RC造の約半分。
改装を数年毎に計画している事業者にとっては、
とても重要な項目です。
木造は軽くて丈夫。地震にも強いです。
そして、他の工法に比べ、建物全体の荷重が軽いため、
基礎にかかる負担を軽減できます。
基礎の断面寸法が鉄骨造と比較してとても小さいことから、
基礎工事の材料費、施工費、残土処分費なども大幅に軽減できます。
建物重量がとても軽くなることから、
地盤改良コストも抑えることができます。
木造は鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して、
工期が短いこともメリットです。
木造の場合、プレカットされた部材を現場で組み立てるので、
作業がスムーズに進行し、工期短縮が可能です。
構造躯体の施工で比較すると、鉄筋コンクリート造は、
配筋→型枠→打設→養生の期間(これを打設回数分繰り返す)が必要になります。
鉄骨造は建て方自体には問題はありませんが、
工事契約後に施工会社が決定してから鉄骨の発注をすることが多く、
工期に影響を与えます。
鉄骨特有の事前の納まりの検討や施工図作成にも時間がかかります。
木造で使用する一般流通材や建材は、
戸建住宅という大きな市場で流通している部材のため、
ほとんどが短納期で入手できます。
倉庫、店舗、事務所を木造で計画することのメリットは非常に多いです。
そのメリットを最大限に発揮するためにも、
構造設計者と連携し、設計を工夫することが重要です。
そのためにも、木造に適したサイズ感を知っておくことが重要です。
弊社では、
・低層、できれば平屋
・500㎡から1500㎡くらいまで
の倉庫、店舗、事務所は木造化をお勧めしています。
また、倉庫や店舗は庇を出して車寄せを計画するケースがあります。
・庇は、木造の場合、2間ピッチに対して1間くらいまでがノーマルで、
それ以上の場合は全体的な構造計画が必要です。
このようなサイズ感がわかれば、無理のない設計が可能です。
木構造デザインは、木造の倉庫、店舗、事務所の豊富な実績がございます。
どうぞ、お気軽にご相談ください。