深い庇と軒裏に連続する垂木が、日本の伝統建築の周り廊下を思わせる店舗併用住宅。
「日本三景」の一つとして知られる松島湾沿いの通りと、国宝「瑞巌寺」への参道に面した2面には大きなガラスが入り、現代的な表情をしている。
1階が土産品売り場、2階がカフェ、3階が住居という構成で、正面向かって左手には真っ白な袖壁が3階まで立ち上がり、道を通る人の目線を受け止める。
袖壁は室内の壁へと連続しており、屋内側ではこの壁に沿って、奥行き780mmの耐力壁を910~1,820mm間隔で密に並べて配置。
さらに170mm角の材を重ねて170×340mmとした柱と170×500mmの梁で門型フレームをつくり、柱脚と床構面で一体化することで耐力を確保した。フレームの周りには商品を陳列する棚などを備えることで、スペースを有効活用している。
合わせて、正面右手側では上下階をつなぐ階段付近に耐力壁を集中させ、全体の耐震性を確保する構造計画となっている。
軒裏は燃え代設計によって延焼防止措置としたほか、内部の主要構造部には薬剤による不燃処理を施している。カフェや住居では、海の景色が木枠で縁取られたように広がる。そして、門前町と同化するように建物は佇む。周辺環境や歴史とつながる、現代の伝統建築である。